巽飛呂彦 早くもマットの上に正座した瞳子が、洗い桶の中に液体を入れてかき混ぜている たっぷり、三畳分はあろうかという大きなバスマットだった。二枚を敷き詰めてある。さしもの広い浴場の洗い場も、この分厚いマットでまとまった空きは占められる。それだけではなかった。「濃さは、このくらいで、よいのでしょうか」早くもマットの上に正座し... 2025.09.25 巽飛呂彦