泣きそうに顔をしかめて佐和子がわずかに舌をのぞかせると、中尉は彼女の後頭部をガッと片手でつかんで引き寄せ、強引に唇を奪った

「舌を出せよ、奥さん」
気品ある美貌を覗きこみ、試すように命じた。
「聞こえないのか？舌だよ、舌」
泣きそうに顔をしかめて佐和子がわずかに舌をのぞかせると、中尉は彼女の後頭部をガッと片手でつかんで引き寄せ、強引に唇を奪った。
「ムウウッ……」
（いやあああっ）
嫌でも舌を絡めとられ、強く吸われてしまう。乱暴な接吻に気をとられている隙に背中でブラジャーのホックがプツッと外された。
（ああっ！）
むしり取られたベージュの下着が夫めがけて投げ捨てられるのが目の隅に見えた。夫が身悶えながら叫んでいるが、何を言っているのか、聞きとる余裕が今の佐和子には無い。