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だが覚悟を決めると、帯締めを外し、袋帯を解きはじめる

御堂乱

「どうぞ前へ。貴女がしっかりなさっているので助かります。日本人に恨みがあるわけではありませんからな」
そう言って、進み出てきた淑女の着物姿を中尉は珍しそうにジロジロ眺めた。
牡丹をあしらった艶やかな訪問着に、金刺繍をほどこした染め袋帯。見慣れぬ衣服をどうやって脱ぐのかにも興味はあったが、それ以上に、まだ見ぬ東洋の女の裸身に欲情が疼いた。
「ではあらためて、日本大使夫人のサワコ、裸になってもらいましょうか」
佐和子はさすがに逡巡した。だが覚悟を決めると、帯締めを外し、袋帯を解きはじめる。指先が微かに慄えているが、所作は平時と変わらぬ優雅なものだ。スルスルと解いて着物を剥ぎ、白い長襦袢姿になった。
中尉がニヤリと淫猥な笑みをこぼしたのは、佐和子がいったん床に跪いて着物を畳みはじめたからだ。奥ゆかしい立居振舞いに、ヨーロッパの女には無い典雅な色気が感じられた。こういう女をこそとことん辱しめ、汚し抜いてやりたいと思う。

「全員、裸で壁際に並んで、尻をこっちに向けろ」夫の目の前で、餓えた獣たちの餌食になる令夫人。愛する娘をかばうため、兵士に強姦される人妻。収容所内で淫らな性的拷問にかけられる美母娘。縛られ、穢され、弄ばれ……無残に横たわる裸身。敗戦国を舞台に御堂乱が描く壮大なハードロマン!